ピアノ教室の月謝の決め方|安く始めて後悔しないための考え方
月謝を決めるとき、多くの人が近所の教室を調べて「だいたい同じくらい」に合わせます。 これが後で一番苦しくなります。相場は他人の事情で決まった数字であって、 あなたの必要額とは何の関係もないからです。
順番を逆にします。先に必要額を出し、そこから月謝を割り出す。
まず、年間にいくら必要かを出す
月謝ではなく年間で考えてください。教室業は月によって収入が振れるので、 月単位で考えると必ず読み違えます。
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 生活費 | 手取りでいくら必要か |
| 税金・社会保険 | 所得のおよそ20〜30%を見込む |
| 教室の経費 | 調律、楽譜、光熱費の按分、保険、発表会の持ち出し |
| 設備の更新 | ピアノの修繕、防音の補修。年間で積み立てる |
| 空き枠 | 稼働率は100%にならない。80%で計算する |
最後の行を忘れると必ず足りなくなります。全枠が常に埋まる前提で計算した月謝は、 現実には2割少なく入ってきます。
年間レッスン回数から逆算する
「月4回」は年48回ではありません。お盆、年末年始、発表会週、 自分の体調不良を差し引くと、実際は年40〜44回です。
必要な年間売上を A、年間レッスン回数を B、生徒数を C とすると
月謝 = A ÷ C ÷ (B ÷ 12)
たとえば年間売上360万円が必要で、生徒20人、年間42回なら 360万 ÷ 20 ÷ 3.5 = 月謝 約51,000円。高すぎると感じたはずです。
あなたの場合の月謝を逆算する
※ この計算はあくまで目安です。実際の金額は商圏や指導内容によって変わります。
これは生徒20人では足りないという意味です。月謝を下げるのではなく、 生徒数か単価のどちらを動かすかを決めるのがこの計算の目的です。
安く始めることの本当のコスト
開業時に「まずは安く」と考えるのは自然ですが、代償が2つあります。
値上げは新規より既存に効かない。 月謝8,000円で入った生徒に 12,000円を提示するのは、新規に12,000円を提示するより何倍も難しい。 最初の価格が、その生徒に対する上限を事実上決めてしまいます。
安さで来た生徒は安さで去る。 価格で選ばれた関係は価格で崩れます。 近所に7,000円の教室ができたときに、何も引き止める材料がありません。
どうしても安く始めたいなら、期間を区切ってください。 「開講キャンペーン価格・6ヶ月間」と最初から明示する。 これなら値上げではなく、予定どおりの通常価格への移行になります。
月謝以外で調整する
月謝そのものを動かさずに、実質的な単価を上げる方法があります。
- 年間教材費を別建てにする(年5,000〜10,000円)
- 発表会費を実費で明確に分ける。月謝に混ぜない
- 振替のルールを決める。無制限の振替は、実質的な値引きです
- レッスン時間で階層を作る(30分・45分・60分)。進度で自然に上がる設計にする
特に振替です。月4回の月謝で毎月2回振替に応じていたら、 実質的な1回あたりの単価は下がり続けます。月2回まで、当月内のみ のように明文化してください。
値上げの伝え方
数年に一度は必ず必要になります。避けられないので、先に型を決めておきます。
- 3ヶ月前に書面で伝える。口頭だけにしない
- 理由を1つだけ書く。「調律費と光熱費の上昇のため」で十分。並べると言い訳に見える
- 同時に何かを増やす。年間回数を1回増やす、教材を追加するなど
- 既存の生徒は据え置き期間を設けるという選択肢もある。ただし期限は切る
「値上げ」という言葉を避けて曖昧にするのが一番こじれます。 金額と適用日をはっきり書いてください。
最初に決めておくこと
- 年間の必要額を出す(稼働率80%で計算する)
- 生徒数と年間回数から月謝を逆算する
- 相場と比べる。合わせるためではなく、差の理由を説明できるようにするため
- 振替ルールと発表会費を、月謝と分けて明文化する
- 値上げの型を先に決めておく
相場を見るのは最後です。先に見ると、必ずそれに引きずられます。
生徒側が、この問題をどう見ているか
出典